2013年1月28日月曜日

「おとのわ」はどうしてうまれたの?

「おとのわ 2013」までいよいよ一週間をきりました。
天気予報が気になりますが、今のところ雪は降らないようです。


開催が近くなり、あらためて「おとのわ」のことをお話ししたくなりました。
長いので、ご興味のある方だけお読みください。

「おとのわ 2013」の開催が決まったのが約二ヶ月前。怒濤の準備に追われる日々でしたが、
昨日、最後のスタッフ全員でのミーティングをひらきました。
全員と言っても女性四人です。

メンバーの一人、佐藤弥絵さんは昨年5月に出産した新米お母さん。おいしいお菓子とお茶でなごみながら原発や放射能に関するおしゃべりや情報交換をする場「bun bun cafe」のスタッフとして毎月開催。「ちいさなたび Japan」のスタッフでもあります。

もう一人は、自宅でシュタイナー教育の自主幼稚園を運営しているゆんた美樹子さん。
美樹子さんは、東京電力福島第一原発事故以来、放射能の高汚染地に住む母子の保養をサポートする「ちいさなたび Japan」の代表もしています。

もう一人は、オリジナルアクセサリーのブランドを展開しながら、幅広く活動し、こけし人形劇もされているおおともみゆきさん。
「ちいさなたび Japan」スタッフ。

私は、仙台でカフェのある古本屋「火星の庭」というお店をやりながら、震災後の暮らしとコミュニティの在り方を模索している前野久美子です。

四人に共通するのは、「原発はいらない」という気持ちと「音楽が好き」ということです。
それは「この街で楽しく暮らしたい」という意味と同義です。
「おとのわ」をやろうと思い立った一年半前は、その気持ちを言うことすらはばかれる空気がありました。

仙台は、津波と放射能の被害の板挟みになって言葉が発しにくい場所になりました。
宮城県の隣りは福島県です。周囲には津波で肉親を亡くした人、原発事故で住む場所が強制避難区域になったため避難している人、避難区域ではないけれど住む場所が放射能に汚染されたため自主避難している人、農業漁業の生産者、小売業者、小さい子どもを抱えた親達、原発の作業員、電力会社の人、役所の人、教師の人、さまざまな震災の被害に遭った当事者がいます。
私達は望むと望まないとに関わらず、今まで考えたこともない問いに日々向き合わざるえない。
でもその想いを口にする場所と人を慎重に選ばなければならない。
なぜか。何か言葉を発すれば誰かを傷つけるのではないかという不安に襲われているから。
それは震災後から今もずっと続いています。

こんなことばかりでは、神経が持たない。
ではどうしたらいいのだろうか。答えはすぐに出ないし、
ちょっとでも楽な気持ちにならなければ、考える力もわいてこない。
一度、鬱憤を晴らそうよ。それには音楽だよ。と四人で会って思ったのでした。

ちょうどそのころ、オープンしたばかりのライブホールのRensaの方とお会いする機会がありました。
「私達で音楽イベントをやりたいんです」と言うと、「じゃ、Rensa貸しますよ(無料ではないです)」と言ってくださいました。そこから半年、無我夢中の手探りで「おとのわ」を作って行きました。
スポンサーも助成金もありません。規模は小さいとはいえ100万円規模のイベントで、音楽イベント素人の100%手作りです。

走り出してはみたものの、もし赤字になったら本業のお店の経営も危うくなる。と内心心配で眠れなくなり、年が明けると難聴になっていました。左の耳がまったく聞こえない。耳鼻科に行くと「ストレスですね」と言われました。ストレスを発散したくてやるのにこの始末。他のスタッフには内緒で、金属音のする耳鳴りとつき合いながら準備を続けました。すみません、愚痴を言いたいわけではないのに。

一回目のおとのわは開催一週間前でネットで売れている前売の数は19枚でした。もう完全に赤字と腹をくくると吹っ切れて、あとはやるだけ楽しむだけと思い、当日にのぞみました。すると、スタッフや友人達、協力してくださった方々が預かってくれたチケットが思った以上に売れていたことがわかり、そして、当日券を求める長蛇の列が会場外のアーケードまで続きました。

結局、来場者は400名を越え、30万円の黒字を出し、収益を母子週末保養プロジェクト「ちいさなたび Japan」とせんだいコミュニティカフェ準備室に寄付できました。

ですが、そういった数字的なことよりも、親子連れがほんとうに多く、子どもが100人近く来てくれたことがうれしかった。
その子達がほんとうに楽しそうにしてくれたこと。お母さん達に「すごく楽しい」「久しぶりにライブハウスに来た」と言われ、どんな人達がこのイベントを待っててくれたのかわかりました。
自分達と同じように、毎日「何を食べたらいいのか」「このままここに住んでいていいのか」「ニュースは本当なのか」「気にしているのは私だけじゃないのか」……、そんな不安に鬱々としていた人達がお祭りに集まって、「一人じゃない」と思えること、
それだけでもやる意味があると思いました。

そして一年がたった去年の暮れ近く。
二回目の開催はむずかしいと思っていた時、
たくさんの人達から「またやらないの?」「二回目はないの?」と聞かれ、会場のRensaさんに「2月空いてますよ」と言っていただいた。そうか。ではやるかと四人で決めた。
今度は代表を弥絵さんがやってくれることになりました。
そこから今日まで二ヶ月です。

「おとのわ」がなぜ2月なのかは、会場のRensaさんが比較的すいていて、
この時期だったら貸していただきやすいからです。
他の月に週末借りるのは、大人気のライブホールなので難しいです。

こうして二回目の「おとのわ」が実現しました。
前回来ていただいた方には
「一年が過ぎたね。また会えてよかったね」と再会したいです。
初めての方には
「おとのわへようこそ!手作りのお祭りをどうぞ楽しんでいってください」とご挨拶したいです。

そしてもうひとつ、このお祭りを続けて、
組織や大きな力を借りなくても自分達で楽しい時間と豊かな暮らしをつくる
「ちから」を作っていきたいなぁと願っています。


「おとのわ 2013」は、
  いろいろなアイディアが集まって新しいことをします。

*もっともっと子どもが楽しめるように、
 ステージにこどもの広場をつくります。
  別室に授乳室もあります。

*<おしらせのわ>では、
  原発や放射能についてのさまざまな情報が集まっています。
  食品の放射能測定のデータ、避難・保養について、
  身近なところで活動している人達のことなどなど。

*ホールは暗くせずに、出演者は客席と同じフロアで登場します。
  高低も仕切りもありません。
  観客席は、靴を脱いでゴザの上の座布団に。
  座るのが苦手な人のために椅子席も用意します。

*前回はロビーに5ブースだった<もののわ>が、20ブースになりました。
  しかもホールにブースが並びます。
  歌やお話しを聴きながら、
  美味しいものや雑貨など買いものを楽しんでください。

*節分だから豆まきもします!

*ステージに「おとのわ」のシンボル「音神様」が鎮座。
  どんな風貌かは当日までのお楽しみ。


*今回はゲストに石井ゆかりさんをお迎えして、
  「星占い」の話をしていただきます。
  なぜ「おとのわ」に星占い?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
  でも、なるほどと思う人もいそうです。
  語りも一つの音楽。そう思ったとき、石井ゆかりさんに来ていただき
  たいと思いました。
  石井さんの本を読むと、音楽を聴いているときと同じような「開放感」
  を感じます。
  知らずに自分で自分を縛っていたものが解かれて「だいじょうぶ」と
  言われている気がします。
  音楽と同じように、読む人に「生きるちから」をくれるのが石井さん
  の言葉だから、きっと本を読んでいただければわかると思います。
  お会いすればもっと。
  そして、逆に石井さんファンの皆様に、「おとのわ」の音楽を楽しんで
  いただけたらうれしいです。




毎年この季節に
「今度はだれが来るんだろう」「どんなお祭りになるんだろう」と
待っててもらえるような真冬の村祭りを作っていきたいです。

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